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荒井DAZE善正/プロスノーボーダ #3
人に支えられて生きている

仲間に囲まれる闘病中の荒井さん

いま自分が生きているのも、スノーボードに打ち込めるのも骨髄バンクのおかげ。でもその必要性や意義、ドナー登録者の少なさはほとんど知られていない。特に若い世代の人たちには。ならばスノーボードを通して彼らから共感を獲得してみせる。そんな想いから東京のど真ん中に雪を降らせ、イベントを始めた熱血漢がいる。一度は死をも覚悟した男とそのメッセージを取材した。

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「また滑る」 闘病中も筋トレ

その後もドナーが見つかるまでの間、過酷な抗がん剤治療が繰り返された。体力的にも精神的にも非常につらい時期だった。

半年後、ようやく同意してくれるドナーが一人見つかった。関東圏在住の50歳代の女性だと聞かされた。「ドナーに直接会うことはできないのですが、私が今こうして生きていられるのもその方のおかげ、引き合わせてくれた骨髄バンクのおかげです」

移植後、体重は15キロ以上も減ったが、回復も早かった。「いつの日かプロボーダーに復帰したいという強い希望を胸に、闘病中から筋トレやイメージトレーニングを欠かさなかったのが幸いしたようです」

半年後にはもう北海道のゲレンデに立っていた。もちろんスノーボードで滑るため。「生きている喜び、またボードで滑ることができる喜びに全身を支配されました」

「人の支えで生きている」

多額の費用がかかる血液疾患の治療にあたっては、スノボ仲間が“DAZE募金”を設立し、カンパを集めてくれた。

「大きな助けになりました。それ以上に、自分はいろんな人に支えられて生きているんだなと実感できました。そんな信頼できる仲間が作れるのもスノボの大きな魅力のひとつですね」

このころからスノボの魅力を発信していけるイベントをやりたいと考えるようになるのだが、同時に「この難病に打ち勝ったら、骨髄バンクの必要性を多くの人に伝えたい」とも思うようになっていた。

ただ、“骨髄バンク”という言葉を出すだけで、若い人たちが離れていってしまうというジレンマも感じていた。骨髄バンクの登録は18歳以上54歳以下という年齢制限があるため、なるべく若い人に興味を持ってもらいたいのだが、積極的に関心を示す若者が少ないのが現実だった。

華麗なテクニックで観客を魅了
若者や家族連れで終日盛況だった「東京雪祭」(代々木公園で)
若者や家族連れで終日盛況だった「東京雪祭」(代々木公園で)

しかし、そんな無関心を解消し、少しでも興味を持ってもらうためのアイデアが頭に浮かんだ。「若い世代に人気の高いスノーボード関連のイベントを東京で開き、骨髄バンクをPRすればいいんじゃないかって思ったんです」

実行に移したのが「東京雪祭」だった。当初、「成功は難しいのでは?」と懐疑的な見方もあったが、チャレンジは成功。晩秋の代々木公園を代表するイベントに成長した。

「東京雪祭」の会場につくられた雪山で遊ぶ子供たち(代々木公園で)
「東京雪祭」の会場につくられた雪山で遊ぶ子供たち(代々木公園で)

「勇気を与えられる」

会場の一角には演奏ができるステージもある。荒井は「DAZEBAND」のボーカルとして自らステージでマイクを握り、イベントを盛り上げる。

「私があえて前に出ることで、骨髄移植をしたあとでもこんなに元気に活動していけるということをわかってもらえるし、そのことでこれから移植を受ける患者さんに勇気を与えられると思うんです」

自らステージに立ちマイクを持つ荒井さん(中央)
自らステージに立ちマイクを持つ荒井さん(中央)

SNSも駆使し、患者とその家族、スノーボードやボランティア仲間たちに情報発信し、自分の生きざまを見てもらっている。「必ず光は差すから希望を捨てず、生還してほしい。少しでも構わないから一緒に患者を助けてほしい」と、常にエールやメッセージを送っているのだ。

「イベントは10年続いてはじめて成功だと思うし、そこからが本当の意味でのスタートになると考えています」。更なるステップアップに向けてますます精力的に活動を続ける荒井。第2のスタートはもう1年後に迫っている。

(敬称略)

<終わり>

「患者に勇気を与えたい」と熱く語る荒井さん

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プロフィール 荒井DAZE善正(プロスノーボーダー)

1979年3月10日、東京都出身。16歳でスノーボードを初体験し、その後プロを目指して国内外で活動する。2005年、100万人にひとりという「慢性活動性EBウイルス感染症」を発症し、余命宣告を受けるが、2008年、日本骨髄バンクを通じて骨髄移植を受け、生還する。現在はプロスノーボーダーとして復帰。骨髄バンクの普及やドナー登録推進のための活動にも精力的に取り組む。2009年、自らの体験を綴った「NO SNOWBOARDING NO LIFE スノーボードがくれた命」(トランスワールドジャパン株式会社)を出版。
東京雪祭2019 実施報告:https://sbpif.net/tokyo_snow_festival/

取材協力:一般社団法人SNOW BANK 全国骨髄バンク推進連絡協議会 日本骨髄バンク