クラウドファンディング どりサポ®へはこちらをクリック

ノブ・ハヤシ、大谷貴子/白血病患者支援
「ママになる喜びを患者に」#15

元K-1ファイターで現役格闘家のノブ・ハヤシ(42)。かつて闘病のベッドから「日本にも骨髄バンクを」と叫び、実現への原動力となった大谷貴子(59)=全国骨髄バンク推進連絡協議会顧問。「どりサポ」でもおなじみの両者はともに骨髄移植で白血病を克服し、今はそれぞれの道で白血病患者を助けている。互いに尊敬しあう間柄だが、違いもある。ノブはわが子を抱く幸せを知り、大谷は知らない――。そんな2人が今度は同じ舞台に立ち、若い女性患者の妊娠支援に向かう決心をした。

(全16回連載)

「こんなに賛同が」

全国骨髄バンク推進連絡協議会は「こうのとりマリーン基金」再建のためのクラウドファンディングの目標額を1000万円に設定した。協議会の顧問で、「クラウドファンディングをやろう」と言い出した大谷貴子はサイトで「皆さんのお力で患者に希望を」と訴え、個人でも知り合いという知り合いに協力を求めた。

寄付者には寝る間も惜しんでお礼のメールを送った。もちろん、協議会の他のメンバーも支援者獲得に奔走した。

主催チャリティー麻雀大会で募金箱を持つルーラー山口さん。SNSでも積極的に支援を呼び掛けている。
主催チャリティー麻雀大会で募金箱を持つルーラー山口さん。SNSでも積極的に支援を呼び掛けている。

途中で分かった課題は「募集期間内に、いかに多くの人に白血病患者の不妊と卵子保存の問題、それを解決する基金の苦境を知ってもらうか」。つまり情報発信の方法だった。あちらこちら足を運び、相手に直接ぶつかるのも有効だったが、限界も見えた。

試行錯誤の中で力を発揮したのはSNSだった。大谷は「顔も知らない大勢の人から、こんなにも賛同が。やはり寄付集めにSNSが欠かせない時代なんだ」と瞠目した。

クラウドファンディング挑戦を伝える全国協議会ニュース2019年5月号
クラウドファンディング挑戦を伝える全国協議会ニュース2019年5月号

目標達成!

クラウドファンディングは終わってみれば1300万円を集め、2か月後、成功裏に幕を閉じた。基金の財政も一息つき、当面の危機は脱した。助成額も倍の上限10万円まで引き上げ、問い合わせは申請も少しずつ増えてきた。

基金は2013年11月の発足当時は官民初の卵子保存を対象にした助成だったが、これが嚆矢となり、白血病患者も対象に含めた「がん患者妊孕性温存治療費助成事業」を始める自治体が出てきた。上限は20万円(福岡県、神奈川県、広島県ほか)を中心にばらつきこそあれ、ほぼ所得制限もなく、助成を受けられるようになった。

「新しい手法を」

大谷は「自治体が次々助成に乗り出してきたのは患者のためには朗報だ。けれども、まだ全国すべての自治体ではないし、マリーン基金の存在意義がなくなったわけではない。マリーン基金も現状に満足せず、一層の充実を図らないと。白血病の不妊という社会課題をこれまで関心のなかった層、特に若者たちに知ってもらう必要もある。何かもっと新しい手法はないだろうか」と、次の挑戦テーマを意識し始めた。

新たな手法を模索しなければならない事情がもう一つ出てきた。コロナ禍である。

昨年、都内で開かれたイベント。相次ぐイベント自粛でこうした献血の機会も減る一方。
昨年、都内で開かれたイベント。相次ぐイベント自粛でこうした献血の機会も減る一方。

「埋没するだけ」

新聞報道によると、2020年4~7月の都内の献血者数は必要数に届かなかったという。感染を恐れ、献血バスや企業などの会議室を会場にした「集団献血」が相次いで中止になったことが大きかった。日本骨髄バンクへのドナー登録も低調になった。

免疫力が低下している白血病患者にとってウイルス自体が脅威だが、命綱のドナー登録者と献血不振も同じくらい脅威だ。コロナ禍に苦しんでいるのは白血病患者ばかりではない。弱い立場の者は誰もがあえぎ、活動自粛の中で救いの手が差し伸べられるのを待っている。

「だからと言って、こちらから何もしないで済むものでもない。手を打たなければ埋没するだけだ」。大谷は危機感を深めた。

そのとき、大谷を尊敬する格闘家が「大谷さん。僕でできることがあったら何でもお手伝いします」と名乗りを上げた。元白血病患者のノブ・ハヤシだった。

敬称略

(全16回連載)

#16に続く

最初から読む(#1)

取材協力 全国骨髄バンク推進連絡協議会 https://www.marrow.or.jp/