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大谷貴子/骨髄バンク支援ボランティア #1
卑怯な自分が弱者救済の出発点

協議会の全国大会のパネルディスカッションで発言する大谷さん。隣りは若尾文彦・国立がん研究センターがん対策情報センター長

ともに骨髄移植で白血病を克服し、今は患者救済のボランティアに身を投じる2人のアスリート、格闘家ノブ・ハヤシとプロスノーボーダー荒井善正が感謝、尊敬してやまない女性がいる。日本骨髄バンクの生みの親、大谷貴子(58)=全国骨髄バンク推進連絡協議会顧問=だ。大谷自身も若くして白血病に襲われ、万分の一という確率で実現した骨髄移植を経て生還した身。与えられた第二の人生を患者のために尽くす毎日だが、その道を開いたのは、実は病魔に見せつけられた醜い自分だったという。

「患者を励ますが、甘やかしもしない」

 「これからはそんな無茶をせず、体を大事に。あなた一人の身ではないのだから‼」

 突然の肺炎を押して9月11日の日本骨髄バンクチャリティマッチ「チャクリキ4」のリングに上がったノブ・ハヤシ(41)の身を案じ、試合後、LINEで忠告した女性がいる。全国骨髄バンク推進連絡協議会の前会長で今は顧問の大谷貴子(58)だ。

 白血病を患ったノブは実姉からの骨髄移植のおかげで格闘技界に復帰できた。「恩返しに、リングから白血病患者と骨髄バンクを応援する」。盟友の甘井もとゆき(ドージョーチャクリキ日本代表)と固い誓いをたて、2015年3月、「チャクリキ1」を開催した。以来、ノブは常にチャクリキのリングに立ってきた。

 たとえ肺炎でも誓いを破る理由にはならなかった。そんなノブの雄姿に「チャクリキ4」の観客も賞賛の拍手を送った。

 大谷もノブの覚悟をじゅうぶん承知していた。骨髄バンク支援に身を投じた者同士。「チャクリキ4」を間近に控えた8月、同じく骨髄移植で白血病を克服したプロ雀士・ルーラー山口(43)主催の骨髄バンク支援麻雀大会でも、並んで「ドナー登録をお願いします」と訴えた。

 実はノブはこのころ、ようやく長年の免疫抑制剤服用から解放されたばかりだった。そのことを知っていた大谷は「まだどんな異常が起こるか分からない上に肺炎。そんな身で病院を抜け出し、リングに上がるなんてリスクが高すぎです。何よりノブ君に二度と会えなくなるのはいやですから、言わずにはいられませんでした」と、あえて苦言を呈した理由を明かす。

肺炎を押してチャクリキ4のリングに立ったノブ・ハヤシ選手(右)。左は対戦相手の青木真也選手(撮影:峰村一光)

「私以外に誰が叱れますか」

大谷は患者を励ます立場だが、「甘やかしもしません」と、患者のわがままや不見識にも遠慮なくモノ申す。そんな患者の一人が「チャクリキ4」のノブだったのだ。「私以外に誰がノブ君を叱れますか。あの英雄視されている格闘家を。でも彼のために言うべきは言ってあげないと」。毅然とした言葉に患者の真の味方だという自負がにじむ。

LINEには書いてなかったが、こうした大谷の秘めた心情をノブも素直に受け止めた。さっそく「わかりました。気をつけます」と返信した。

(敬称略)

ルーラー山口さんのチャリティー麻雀大会でノブ選手(左)を紹介する大谷さん

〈続く〉

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▽プロフィール 大谷貴子(おおたに・たかこ)

1961年6月、大阪市生まれ。1986年12月、千葉大大学院在学中に慢性骨髄性白血病と診断され、名古屋大学医学部付属病院で1988年1月、母親の骨髄移植を受ける。2005年7月、全国骨髄バンク推進連絡協議会第2代会長に就任。主な著書に「霧の中の生命」(リヨン出版)、「生きてるってシアワセ!」(スターツ出版)など。日本青年会議所TOYP大賞グランプリ(1991年)、朝日社会福祉賞(1995年)など受賞。埼玉県加須市で夫と二人暮らし。
全国骨髄バンク推進連絡協議会ホームページURL https://www.marrow.or.jp/

取材協力:全国骨髄バンク推進連絡協議会 一般社団法人SNOWBANK 日本骨髄バンク ドージョーチャクリキ日本